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研究テーマ

今後研究室に参加される方に携わって頂ける可能性のある研究テーマは以下の通りです。すでに本研究室のメンバーが進めているテーマもありますが、希望に応じて振り分けます(2007年4月現在)。

1)学習欠損突然変異体の分離による新たな学習関連遺伝子の発見と機能解析
 これまで連合学習あるいは嗅覚順応に欠損のある変異体の分離を行ってきましたが、現在未解析の変異体もあります。 これらの変異体の原因遺伝子のマッピングを進め、最終的に塩基置換を発見することにより原因遺伝子の同定を行います。 このアプローチにより、これまでに知られていなかった遺伝子やシグナル経路の発見を目ざします。
 得られた遺伝子がどのように働いて連合学習や嗅覚順応の機構に寄与するのかを、発現部位の決定、細胞特異的プロモーターによるレスキュー実験をはじめとした分子遺伝学のさまざまな手法を使って解明します。そして、その遺伝子が他の感覚応答にも関わるかを調べることにより、感覚情報の統合における機能を明らかにします。

2)サプレッサー変異体の分離による学習および神経可塑性の分子機構の解明
 当研究室では化学走性の連合学習にインスリン/PI3キナーゼ経路や膜蛋白質カルシンテニン(アルカディン)が働くことを見出しています。また、嗅覚順応にGo, Gq, ジアシルグリセロール経路やRas-MAPキナーゼ経路が働くことを見出しています。これらのシグナル伝達についてはここに記載した以外にも関与する因子がかなり分かってきましたが、分子機構に不明な点も残されています。
 これらの経路の欠損のサプレッサー変異体(抑圧変異体)を分離することで、シグナルの下流で働く因子を同定するアプローチを行います(解説はこちら)。これに候補遺伝子によるアプローチを組み合わせてシグナル経路の全貌を解明します。

3)遺伝子改変と部位特異的遺伝子発現による神経可塑性の神経回路と分子機構の解明
 これまでにみつかった遺伝子や、1)、2)により新たに見つかる遺伝子を改変して遺伝子産物の活性を変化させ、特定の神経に発現させます。この作業により、その遺伝子が神経回路のどの部分でどのような働きをするのか、神経回路の動的な変化を積極的に作り出しているのかを明らかにします。
 また、神経を人為的に活性化したり、不活性化することのできる遺伝子、あるいは細胞死を起こさせる遺伝子が知られています。これらの遺伝子を特定の神経に発現させることにより、神経回路の解析を行います。

4) 単一神経のマイクロアレイ解析による神経個性のシステム的理解
 神経系は体を作る組織の中でも最も多様性に富む細胞集団です。個々の神経細胞の個性がどう作られるかは神経系の機能を理解する上で重要な問題です。当研究室では、線虫の特定の神経細胞群からmRNAを選択的に分離する方法を開発しました(解説はこちら)。この方法により、感覚神経に発現する遺伝子を多数同定し(Kunitomo et al. 2005)、現在感覚神経の機能解析を進めています。また、これを一個一個の神経細胞に適用し、種類の異なる神経で、どのような遺伝子セットが機能の違いと対応しているかの解析を始めています。
 このような解析には、RNAiなどの逆遺伝学の方法を用いて、同定された遺伝子の機能阻害を行う方法が有用です。これも線虫の利点といえます。得られた結果を生物情報科学の手法を駆使して解析し、システムとして個々の神経細胞およびその間の相互関係を理解することを目指します。

5)ビデオ画像とコンピューター解析による行動メカニズムの解明
 線虫はNaClなどのさまざまな化学物質を好み、これらに寄っていきますが、どのようなメカニズムで近づいていくのでしょうか? また、連合学習を行わせると、NaClから逃げるようになりますが、どのような行動をしているのでしょうか。また、その行動は神経回路によりどう制御されているでしょうか。
 このような問題にアプローチするために、行動追尾装置(ビデオトラッキングシステム)を作りました。この装置を用いて、行動を数値的に解析することが可能です。この方法により、化学走性行動を引き起こすための感覚入力と行動出力の関係がわかってきました。
 今後、線虫が好む化学物質、嫌う化学物質、味物質と匂い物質などで行動を比較し、複数の刺激に対する応答を解析するとともに、学習前後の行動を解析し、行動の違いを特定します。さらには突然変異体で行動を解析し、分子、神経メカニズムとアウトプットとしての行動を繋ぐための試みを進めます。実験と数値解析の組み合わせに興味ある方が適任です。

6) レーザーによる破壊と神経活性の測定による神経回路解析と神経回路のモデリング
 線虫では顕微鏡に装着したレーザーで狙った神経を破壊することができます。行動を作り出す神経回路を明らかにするために、個々の神経を破壊した結果、行動がどう変わるかを解析します。パラレルプロセシングの可能性が高いので当然複数の神経の同時破壊も行います。
 一方、神経回路解析には神経の活動を測定することも重要です。これまで、線虫の弱点は電気生理学ができないことだと言われてきました。しかし近年、電気生理学や、カルシウムインジケーターが使われるようになってきました(解説はこちら)。これらを用いて実際の神経活動を測定することを開始しています。これらの方法により、実際の神経回路がどう動いているかを解析します。
 線虫の最大の特徴は、302個の神経からなる全神経回路がわかっていることです。そこで、神経活動、変異体、神経細胞破壊、行動解析の結果と合わせ、神経回路の設計図をもとにしてモデリングを行い、実験結果と比較しつつモデルの妥当性を検証します。


 



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