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行動の分子レベルでの理解を目指して


動物の行動は発生過程で精巧に構築された神経回路の動的な働きによってもたらされています。神経の機能の研究は近年飛躍的な進歩を遂げていますが、まるごとの動物としての行動が分子レベルで理解されている例はどの程度あるでしょうか。

「特定の行動や行動の変化を引き起こしているのは、どの神経のどの分子のどのような変化であるか?」という質問の答えが明確に示された例は、アメフラシのエラ引込反射や哺乳類の瞬目反射など、ごく少数に過ぎません。新たな研究によってこのような疑問に答えるためには、遺伝子、細胞、個体の各レベルを通じて解析を行える系が有利です。

そこで私たちは線虫C. elegansというモデル動物を用いています。この生物はすべての神経のつながりが分かっており、行動の分子レベルでの理解に最も有利な特徴を持っているため、神経の機能についての優れた研究成果が世界中で次々と生み出されています。私たちは、化学走性など線虫のさまざまな行動、そのもとになる感覚情報処理のメカニズム、行動をつくりだすしくみ、学習により行動が変化する分子機構、他の個体との相互作用によって行動が変化する機構など、線虫の示すさまざまな面白い現象を行動遺伝学的に明らかにすることを目指して研究を行っています。

さらに、線虫では全神経の数が少なく、ゲノミクスやインフォーマティクスが進んでいることから、神経系をシステマチックに解析することが可能と考えられます。全神経細胞の活動を高度な顕微鏡技術によってとらえ、システムとしての神経系の動態を捉えます。そしてそれをシミュレーションにより再現し、コンピューターの中で生きものの行動をどこまで再現できるかに挑みます。

これらの神経系の理解をもとに、より高次な神経機能の理解に至るために、マウスを用いた脳機能研究も開始しています。線虫、マウス、コンピュータのトライアングルを行き来しつつ、脳の謎に挑んでいきます。

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